高齢者における睡眠の問題は、生活の質を大きく低下させる要因となります。驚くことに、高齢者の約半数が何らかの睡眠障害を経験しているとされています。これまでの研究では、約7時間の睡眠が最も死亡リスクが低いことが示されてきましたが、睡眠の質を考慮した研究は少ないのが現状です。しかし、2023年12月に日本疫学会誌に掲載された新たな研究が、この視点を大きく変える可能性を秘めています。京都府亀岡市に住む65歳以上の高齢者7668人(平均年齢73.3歳、女性52.4%)を対象としたこの研究では、睡眠時間と睡眠の質が詳細に調査されました。睡眠の質は0から21点で評価され、5.5点以上が睡眠障害と定義されています。
睡眠時間は、6時間未満(短時間睡眠)、6~8時間(最適時間睡眠)、8時間超(長時間睡眠)の3つのグループに分けられ、これらと死亡リスクとの関連が分析されました。中央値で約4.75年の追跡調査の結果、興味深い事実が明らかになりました。最適時間睡眠を取り、睡眠障害がない人と比較して、短時間睡眠かつ睡眠障害のある人では死亡リスクが56%も増加しました。また、長時間睡眠者では、睡眠障害の有無にかかわらず死亡リスクが増加し、睡眠障害がない人で35%、睡眠障害がある人では83%のリスク増加となりました。
この研究結果は、睡眠時間と共に睡眠の質が高齢者の健康にとって非常に重要であることを示唆しています。論文著者らは、「睡眠時間による死亡リスクへの影響は、睡眠の質によっても大きく変わる可能性がある」と指摘しています。この発見は、高齢者の健康管理における睡眠の質への注目を一層強めるものであり、睡眠障害の予防と管理の重要性を改めて認識させてくれます。