キング・ジェームス・バイブルとは、元々、ヘブル語(旧約聖書)とギリシャ語(新約聖書)で書かれていた聖書を一般人が理解出来る分かり易い英語で翻訳され、かつ、礼拝で自然に読める事の出来る聖書の事です。この聖書は、1611年に出版されたのですが、その時のイギリス国王キング・ジェームス1世が、聖書の専門家に英語翻訳を要請したことから、キング・ジェームス・バイブルと呼ばれています。実際には、54人の翻訳者に要請をし、厳しい審査を通った47人によって、7年程の月日を掛けて翻訳されています。
先日の記事で、その翻訳者の一人であるSamuel Wardの聖書翻訳の際に作ったDraftのノートが見つかったと発表がありました。以下がその記事の抜粋ですが、イギリスのケンブリッジ大学で、アーカイブとして保存されていた物を一人の研究者がたまたま発見したとの事です。
The King James Bible, the most widely read book in the English language from which phrases like “a man after his own heart” emerged is as storied as it is elusive. Now, a historian claims to have found the oldest known draft of the Christian text, written in messy script, in an obscure archive at the University of Cambridge.
このDraftが見つかった事はただ単に発見されたと言うだけではなく、400年前に聖書の翻訳がどのようなプロセスでなされたかを研究する非常に貴重な材料になるのです。この発見されたSamuel Ward のDraftはかなり字が雑で読み辛いとの事ですが、二重線で取り消ししているなどの内容も残っているので、その証拠から翻訳者Samuel Wardからどのような考えをしていたかが推測できるのです。
17世紀において、聖書を翻訳すると言うのは、国王が要請する程の非常に重要な業務であった事が分かります。また、400年未来の研究者が自分のノートを読んでいる事など、本人は全く想定していなかったのだろうと思います。
日本が開国後、明治時代に新しい国づくりのために洋書の翻訳を学者に依頼すると言う事が始まっています。この17世紀の聖書の翻訳においても、国王が聖書の専門家に依頼をすると言う同じような形態をとっています。
この発見をきっかけに他の翻訳者のDraftも見つかるのではないと期待されているそうです。聖書の翻訳がどのようなプロセスで行われたのか、非常に興味がある内容ですね。